今回はアメリカ西部最大級の科学博物館California Academy of Scienceを紹介しよう。サンフランシスコ市内には、ほかにも科学系の博物館としてはエクスプロラトリアム(The Exploratorium)や、以前に紹介したランドール科学博物館などがある。
California Academy of Scienceは独自の研究活動を行う科学機関として1853年に発足し、1874年に科学博物館の運営を始めた。当時の博物館はサンフランシスコ市内(現在のチャイナタウンのあたり)に設置されたが、1906年のサンフランシスコの大地震で倒壊したため、現在の立地場所のゴールデンゲートパーク内に1916年に移転した。ちなみにゴールデンゲートパークは、都市公園としてはニューヨークのセントラルパークとよく対比されており、全米の都市公園のなかではセントラルパーク、シカゴのリンカーンパークに次いで3番目に利用者が多いとされている。
写真1 California Academy of Science 外観
California Academy of Scienceには1923年に水族館が、1934年にSimson アフリカンホールが追加で併設された。さらに1951年に科学展示館、1952年にプラネタリウムが追加された。1959年には図書館や植物園も併設されその後これらの展示館を含めた博物館として長く運営されてきた。その後の別の地震や年月による建物の老朽化が進み、2008年に完全に新築しなおされて現在に至っている。写真1が現状の外観で、建築デザインはイタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏による。エコフレンドリーな建築物としての評価が高く、自然光や自然風の有効利用、グリーンルーフ、太陽光パネルの利用などが特徴的である。
写真2 熱帯雨林館
新しくなった建築の中を見てみると、正面玄関から入ってすぐに27メートル直径の球形のガラス張りの熱帯雨林展示館(写真2)を見ることができ、圧倒的な存在感を感じることができる。その中にはアマゾンの気候が再現され、多様な植物だけでなく昆虫類、爬虫類、両生類などの小動物が観察できる。1階に設置された大きな水槽では、ホワイトアリゲーター(アルビノ)の姿を見ることができる。その下の地下階は大きな水族館になっており、サンゴ礁を模擬した美しい水槽が設けられ、海の生物多様性や、海洋プラスチック問題など、あちこちのパネルにおいて我々に課された環境保護と環境汚染へのチャレンジの重要性が訴えられている。
写真3 マスコットのアリゲーター アルビノ
1階から2階にかけて、森林、地形、地震、恐竜、鉱石類、化石、に関わる数多くの展示があり、地震体験のアトラクションや、実験体験教室なども行われる教室も解放されている。展示物に関して観察や調査を行うための校外学習(写真4)や、水族館をエンジョイする遠足のような活動など、多くの学校から児童・生徒たちが日々訪れている。2階には、多くの動物の骨の標本があり、実際に手にとって観察したり、職員の手ほどきを受けたりして、その詳細を学習できる仕組みになっている。小さな子どもたちに対してもハンズオン形式で、手を動かして遊びながら学ぶ機会も多く設けられている(写真5)。
写真4 展示物を観察しながらの校外学習の様子
写真5 小さな子供たち向けの教材
California Academy of Scienceのミッションは1世代の時間スパンで「地球(自然界)の再生と持続的な豊かさの実現すること」であり、ビジョンとして「すべての人に科学を」という教育の重要性を訴えている。サンフランシスコを訪問する機会があればぜひ訪れてもらいたい。
参考資料またはWEBページ
The California Academy of Sciences
https://www.calacademy.org/
California Academy of Sciences
https://en.wikipedia.org/wiki/California_Academy_of_Sciences
San Fransico Recreation&Parks
https://sfrecpark.org/770/Golden-Gate-Park/
山﨑 友紀
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